イ ギ リ ス 在 住 夫 婦 の 記 録

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イギリスのロックダウンはどう緩和されていくのだろう…という考察

イギリスのロックダウンが3月23日に始まって早46日。今週の日曜日5月10日19時には、今後の見通しについて首相ボリスジョンソンから発表がある予定です。その翌日月曜日から緩和を開始するとほのめかす記事が出たりしていますが、その可能性は?果たして本当に緩和しちゃうのか?イギリスに住む1個人としての考えを踏まえつつ、考察してみます。

そもそも現状のロックダウンの内容は?

ロックダウンが始まってどのような政府要請が出ているか、日常生活への影響、人々の反応などを過去記事で紹介しています。

tash-tsubo.hatenablog.com

この記事はロックダウンが始まってから2週間後に書きましたが、46日が経過した今、一日1回の外での運動が許可されていたり、Social distanceが求められるもののスーパーでの買い物は行きたい時に行けるため、全般的にそこまでストレスは感じていない、この生活にも慣れたという感想です。

ロックダウン緩和の5条件 / 5 tests to be met

ロックダウンをいつからイギリス政府として緩和していくのか、その判断はどのような基準に沿って行うのか、イギリス政府としては5つの条件を提示しています。

 

1.NHSが救命救急など専門治療を充分に提供できる態勢であること

3月には病床不足を懸念してイギリス各地計5か所に、その名もナイチンゲール病院が展示場などを利用して設置されました。しかしその活躍をニュースで聞くことはほぼ無く、需要が無いということで来週にはロンドンのナイチンゲール病院を閉鎖、続いてその他4つのナイチンゲール病院も順次閉鎖されていくようです。

毎日夕方17時からイギリス政府はBriefingというものを実施しており、その中では数値的データと合わせた現状の説明がなされます。そのデータが示すには、入院患者数は減少~安定傾向、空き病床も余裕ありとなっていました。救命救急用の病床は、全体の30%しか埋まっていない=まだ70%の余裕があると示しています。ナイチンゲール病院を閉鎖したらいっきに空き病床数減ったりしないのか…心配です。

2.1日あたりの死者数が継続的に減少していること

専門家によると、死者数のピークは4月8日に来たということ。データを見ると、確かに低めで安定~緩やかに減少しているという感じ。5月6日の死亡者数は498人(病院のみ。家、Care homeで亡くなった方をすべて含むと539人)でしたから、ピーク時に1000人超え(病院のみ)と比べると半分位になりました。

この条件2はクリアとも言えそうです。

3.感染率が対応可能なレベルまで減少していること

イギリス政府が突然「R」なんて言い始めたのは先週4月30日の定例会見でのこと。ちょうどボリスジョンソン首相が公務復帰してから始めて定例会見に臨んだ日です。

感染者一人を元にしてそこから何人に感染が広がるか、それを示すのがR reproduction rateだそうですが、これがいかに低く抑えられるかがロックダウン緩和の1条件です。ケアホームでの感染者が増えたことを受け、R=0.5~0.9というのが5月7日の発表でした。

Rが1より低く保てれば、感染者数の減少傾向を維持できるということで、今のまま行けばこの条件もクリアとなるのかも。

でも皆が家から出て交流しだせば、Rなんて簡単に上がるのでは?と思うのは私の認識不足でしょうか。現状Rが1以下になったのは、ウイルス自体が弱くなったからではなく、皆が家に留まったことで感染機会が減ったから。また交流し始め感染機会が増えればRがぐっと上がりそうですが…

4.検査や保護具の充分な供給態勢が整っていること

検査の数は1日当たり10万件というのが英国政府の目標ですが達成できていません。検査キットが足りないのか、マンパワー不足なのか、それとも皆受けに来ないだけなのか判りませんが、今は医療従事者やCare home向けの検査となっています。検査対応してくれる場所が遠いとか、予約されていたのにその時間になっても受けに来ないとか、色々問題はあるようです。

もっと問題なのはマスク、手袋、ガウンといった保護具で、先日ITVが報道した特集では、英国政府の非常用備蓄にあった保護具たちはほとんどが有効期限切れだったらしいのです。しかも10年の期限切れとか…ひどすぎますね。本来ならこういった有事に活躍するはずだった備蓄達が使えないものだったわけです。昨年には、NHSから政府に対してガウンの備蓄を増やすよう要請もあったようですが、却下されています。この時にはまだ、新型ウイルスが流行するなんて、誰も思っていませんでした。

今政府は、これら期限切れの保護具を再検査することで有効期限を延長し、有効期限ラベルを貼替え。それをNHSに配布しているのです(再検査データは公表されていません)。世の中の色んな商品、公式な有効期限は安全を見て短めに設定されていたりしますが、それにしても期限を10年も延ばすってのは長すぎやしませんかね;

こんな状態だから、一般市民においてはマスクを店頭で目にすることはまずありません。イギリスではここ数週間にわたって、マスクをするべきなのか否かという議論が起きています。他国の対応や少しでも守ってくれる可能性があるものなら着用を推奨せよ!と思いますが、なんせマスクが無いわけですから、政治家や専門家たちは「マスクの効果は確かではない、むしろ逆効果の可能性もある」なんて馬鹿げたことを言っていました。最近は少し方向性が少し変わってきて、「保護具がNHSなど必要な人たちに行き渡らないことは避けなければならない。感染の疑いがある人は、マスクをすることで他の人への感染拡大を防げるかもしれない。でも感染していない人はマスクしても意味ありません。」というものです。政府として間接的に保護具不足を認めた形ですね。でも医療従事者以外のマスク着用は未だに認めたくない様子。

そもそも症状がすぐに出ず、感染者が気づかない内に広めているのが新型コロナの問題なのに、感染の疑いがある人だけが着用って…症状が出てからしか検査を受けられない一般人はどう判断すれというのでしょうか。ましてや元々マスク着用の習慣が無いイギリス人なので、自発的には着用しないでしょうね。こんな政府指示が出ようものなら、マスクを着用しているアジア人はイコール感染者とみなされ、ますます差別にあうでしょう。お願いだから、ロックダウン緩和時には、他国にならって外出時マスク着用を徹底して欲しいです。

 

5.ロックダウンの緩和が第2波を引き起こさない確かな見込みがあること

これが一番確証が得られず、やってみなきゃ判らない条件です; これについては先に緩和を進めている他の国の状況を見るしかないのではと私は思っています。

いまや欧州において、イギリスが一番最悪の死者数を出している国なのでどこを参考にするのか…という感じですが、例えば5月4日から緩和を始めたイタリアが今後2週間を経て感染者数の変化はどのようになるのか、それを見てから緩和を始めても良いのではないでしょうか。(経済的にはそんなに待てないのかな)

 

ということで、私的にはロックダウン緩和の5条件はまだ揃っていないと考えます。

7日の政府Briefingでは、楽観的な憶測を報道するメディアをけん制する形で、ロックダウンの緩和は慎重になされる、政府が現在指示しているStay homeはこの暖かい週末の3連休も順守せよというお達しです。。(それにしても今日は24度もあってとても良い天気です。)

とはいっても、経済的に今と同じロックダウンをずっと続けてはいられませんので、基本的なStay homeとSocial distanceを継続しながら、ワクチンや治療薬が出来上がるまで気を付けながら経済を回すことになるでしょう。

家で仕事できる人は家にいましょう。家から一歩出たらSocial distanceを保ちましょう。マスクを着用して自分も周りの人も守りましょう。

私としてはこのメッセージが欲しいです。

 

10日日曜日のボリスジョンソン首相の発表内容は一体どのようなものなのか、政府として5条件の達成度をどのように見ているのか、心して発表を待ちたいと思います。

 

Shikka